2020/08/27 19:23
木工家
Canaria Wood Works
岸 猛 Takeru Kishi
愛知県一宮市
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【プロフィール】
1987年 愛知県生まれ
2016年 独学で器づくりを始める
2017年 Canaria Wood Worksを立ち上げる
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「Canaria Wood Works」という屋号で製作活動をする岸さんは、乾燥前の丸太を旋盤とノミ使って器を削り出す『グリーンウッドターニング』と呼ばれる技法で主に木の器を製作されています。
また、器を作る工程で余った端材を使ってカトラリーも製作されています。
グリーンウッドターニングとは乾燥前の生の丸太を木工旋盤とノミ使って器を削り出す技法です。
水分を含んだまま真円に削り出された器は、乾燥する工程で生じる伸縮によって歪み捻じれて変形していきます。
その木材が生み出す自然な曲線が魅力的な器です。
仕上げは食用油(亜麻仁油)を塗り込むだけのオイルフィニッシュで、漆やウレタン塗装をした器とは違い、木材本来の質感や木目の美しさを楽しむことができるのも魅力の一つです。
岸さんの工房は愛知県一宮市にあります。
売りに出されていた倉庫を買い、DIYで工房を組み上げたそうです。
集塵機のダクトを各機械に這わせたり、加工機械周りの棚や台も海外youtubeのDIYチャンネルを参考に自作されていて創意工夫の詰まった工房です。
長年バンドで音楽活動をされていた岸さん。バンド解散後、一旦就職し、趣味として通い始めた家具教室がきっかけで木工の道に進むこととなります。
「元々木が好きで、趣味で家具教室に通っていました。ですが、精密さが要求される家具作りは僕には合わなくて…。
そんな中ある本で須田二郎氏の生木の器を見て、ウッドターニングと出会い独学でウッドターニングを始めました。
私は特に器が好きだったわけではありませんが、妻が栄養士ということもあり、彼女の意見も取り入れ試行錯誤しながら作り続けました。
その後、奈良で開催していた須田二郎氏の展示会にお邪魔して、そこから須田さんに教わり始め、今に至ります。」
「材料は街路樹や庭木、雑木林などの通常木材としては利用せず捨てられてしまうような木を使っています。
流通される木材の値段や価値はあくまで人が決めたものです。人にとって利用価値がないとしても、木の本来の価値や魅力は人の手の届かないところにあるのだと感じています。
なので、その魅力を伝えることを一番に考えています。」
「元々木の美しさに感銘を受けて器づくりを始めたので、木の邪魔をしないように、実用品は極力装飾を避けてシンプルなものづくりを心がけています。」
と素材や創作へのこだわりを語ってくれました。
パワフルでレアな仕様の旋盤と刃先を研ぎ澄ましたノミを使い、勢いよく器を削り出します。
樹液や水分が滴るような樹皮の付いた丸太があっと言う間に器へと形を変えていきます。
製作の様子はこちら↓
一般的には木工製品には使われないような庭木や街路樹も岸さんの手によって器やカトラリーに姿を変えます。
その時々で手に入った木材を使って作られる器やカトラリーは一期一会です。
「オイルフィニッシュはウレタン仕上げなどに比べたらメンテナンスや取り扱いに多少注意が必要です。
ですが、表面のコーティングがないからこそ経年や使用による変化も楽しめると思います。
是非、使い込んで自分だけの器に育てて頂きたいと願っています。」
最後にオイルフィニッシュの魅力を語ってくれました。
木工家として歩み始めたばかりの岸さん、まだまだご本人の技術も洗練されていくことでしょうし、それに伴い作品の表現の幅やクオリティも進化していくのだと思います。
素材自身が歪み変形して仕上がる木材が持つ魅力が詰まった『グリーンウッドターニング』の器と、口当たりや舌触りのが良く、陶器の器との相性がいいソフトな使い心地のカトラリーを是非一度使ってみて欲しいと思います。
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Canaria Wood Works
愛知県一宮市
出店・出品情報はインスタグラムをご覧ください
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